宮川の歴史

宗教工芸新聞2003年2月号掲載 房総の伝統 位牌文化を守る

房総の伝統 位牌文化を守る 宮川仏具店(千葉)

関東は位牌中心の祭祀を中心とした仏壇文化が発展した。その位牌文化を房総半島で守るのが宮川仏具店。九十九里に面した光町で店を構える宮川仏具店であるが、房総半島における位牌メーカーとして、これまで独自の商売を展開してきた。

店に入るとまず目に飛び込んで来るのがダルマ。いわゆる朱塗りに目を書き込むタイプのダルマなのだが、「夏場は位牌、冬場はダルマ」というのが宮川仏具店の長い間の商売であった。
宮川仏具店の創業は昭和元年。大木良一社長の祖父である大木三郎氏によって始められた。昭和元年というのはこの三郎氏の創業によるもので、本家の商売の歴史はさらに古いものだという。
ダルマの製造は三郎氏の代から行われてきた。冬場はダルマ、というのは農閑期に農家の人がこのダルマを仕入れて持ち歩き、副業にしていたということだ。ダルマは「家内安全」「商売繁盛」を願う縁起物で吊棚(神棚)に神札などと一緒に祀られる。
ダルマの製造は現在、自社では行っていないとのことだが、この地域にとってはなくてはならない縁起物であり、宮川仏具店でも展示している。

位牌に関しては元々塗りの位牌を製造していた。漆と金箔で仕上げられる位牌だ。その位牌を黒塗りの小型の厨子の中にお祀りする、というのがこの地域独特の位牌の祀り方だ。もちろん現在では欅製の位牌に欅製の厨子という組み合わせもあるのだが、それは黒塗り製品に比べると新しいものだ。大木社長の話によれば、金箔や漆の入手が難しくなった戦争中や戦後間もない頃に、黒塗り製品に代わって欅製品が使われるようになったのではないか、ということだ。
現在でも位牌厨子と位牌という組み合わせで仏壇の須弥壇上にお祀りすることもあるが、元来、この地域の仏壇は、現在見ることの出来るような仏壇ではなく、いわゆる作り付けの棚形式のものであった。位牌厨子もこの棚にお祀りすることを前提として作られてきた。また、位牌(本位牌)は四十九日明けで作る人よりも新盆の時に作る人の方が一般的であったという。つまりお盆をお迎えするためにお位牌が必要ということであり、大木社長の言葉を借りれば「作り立ての新しいお位牌で新盆を迎えてあげたいと思われる方が多かったため」ということになる。

さて、大木良一社長は昭和三十二年生まれ。祖父大木三郎氏、父大木忠次氏の跡を継ぐ房総の位牌師だ。現在の店舗は新しいものであるが、以前は家を工房として位牌とダルマを作っていた。
大木良一社長ご自身も学校を卒業後二・三年近在の仏具店で位牌彫刻の修業をし、現在でも特注品の位牌の場合は自ら彫刻刀を握ることがある。
現在取り組んでいるのはレーザー彫刻機による位牌の文字彫り。以前は手動式とコンピューター式の彫刻機を使っていたが、機械を更新するに当たってレーザー彫刻機を選んだ。
大木社長の凄いところは、得意とするパソコンの技術を生かし、自ら位牌へのレーザー彫刻に挑戦したことだ。そして、位牌への文字彫刻ばかりでなく、家紋彫刻なども行い、お客様から喜ばれている。
◎宮川仏具店 千葉県匝瑳郡光町宮川五三六二ー一 TEL〇四七九(八四)一八八二 FAX〇四七九(八四)三〇五一

宗教工芸新聞2003年2月号掲載
「房総の伝統 位牌文化を守る 宮川仏具店」

宗教用具の総合情報「月刊宗教工芸新聞」
「仏壇店だより」に掲載されました。

関連記事

TOP